ネット上の情報や生産性ハックにおいて、「大人の教養として時刻の足し算引き算くらいは暗算で行うべきだ」という言説が根強く存在します。しかし、認知心理学の観点から見ると、この暗算至上主義には明らかな盲点が存在します。
人間の脳は、マルチタスク下や疲労蓄積時において、60進法の桁上がり計算で通常の約3倍以上のエラーを発生させることが実験で確認されています。特に夕方以降や業務の追い込み時に「18時45分の35分後」を手計算しようとすると、無意識に「19時10分」と誤認してしまう(正しくは19時20分)ような「繰り上がりスリップ」が頻発します。
また、ネット上でよく見られる「タイマーをかければ終了時刻を気にする必要はない」という主張も、スケジュール管理の現場では重大な破綻を招きます。タイマーは「時間が経過したこと」を知らせてくれますが、「次に何時から次の行動を起こすべきか」というタイムラインの接続を設計できません。予定が連続する現代のタイムマネジメントにおいては、タイマー任せにするのではなく、あらかじめ「何分後何時何分になるか」を算出した上でカレンダーに配置する動線が欠かせません。