モスバーガーの価格推移を辿ると、日本の経済状況や外食産業の変遷が鮮明に浮かび上がります。東武東上線成増駅前のわずか2.8坪の実験店舗からスタートした1972年6月、看板商品の「モスバーガー」は1個120円で販売されていました。当時の大卒初任給が約5万円であった時代背景を考慮すると、決して激安スナックではなく、こだわりの手作りバーガーとしての立ち位置でした。
翌1973年に世界で初めて開発された「テリヤキバーガー」は、醤油と味噌をベースにした革新的なソースで大ヒットを記録。1980年代から1990年代にかけては、バブル景気とそれに続くデフレの波に揉まれながらも、200円台から300円前後へと緩やかな改定が進みました。
転換点となったのは2000年代前半です。外食産業全体に吹き荒れたデフレ戦争の中で、マクドナルドが「平日半額キャンペーン(ハンバーガー65円)」などを展開する一方、モスバーガーは安売り競争と一線を画す戦略を選択。2004年頃には看板のモスバーガーやテリヤキバーガーを税込300円前後に設定し、「おいしさと安全性」を前面に押し出すプレミアム路線を堅持しました。
しかし、2020年代に入ると状況は一変します。原材料費やエネルギーコスト、包材費の急騰を背景に、モスフードサービス公式発表による価格改定が2021年から相次ぎ、価格改定の頻度が加速しました。定番商品の具体的な価格推移をまとめたデータは以下の通りです。
創業当時の120円と比較すると、現在のモスバーガーは約3.7倍から4倍の価格水準に達しています。特に2021年から2026年にかけての5年間で各メニューは50円から100円近く上昇しており、過去30年間の推移と比べても極めて急激な上昇カーブを描いていることがわかります。