物忘れが増えると、誰しも「脳の病気」を疑いたくなる。特に40代という年齢は、キャリアの重責と家庭環境の変化が重なる時期だ。不安が募るのも無理はない。だが、脳神経外科学の臨床知見に基づけば、加齢や病気に起因する認知機能低下と、一時的な機能低下には明確な境界線が存在する。
公的医療情報サイトである厚生労働省 e-ヘルスネットの解説によれば、一般的な度忘れは体験の「一部」を忘れるのに対し、認知症は体験「そのもの」を消失してしまう特徴がある。例えば「昨晩食べた料理の名前が思い出せない」のは度忘れだが、「夕食を食べた記憶すらない」場合は注意を要する。日本脳神経外科学会に所属する専門医らも、40代における「言葉の詰まり」の多くは、過度なストレスや睡眠不足が引き起こす脳機能の一時的な停滞であると分析する。
この一時的な機能低下の代表格が、ブレインフォグ(脳の霧)だ。頭の中に靄がかかったようになり、思考のギアが上がらず、会話のキャッチボールで適切な単語を弾き出せなくなる。決して珍しい病気ではなく、現代社会を生きる誰もが陥り得る脳の疲弊現象と言える。