当時、まだ20代前半だった宮野真守が夜神月という超難役に抜擢された裏側には、オーディション現場での語り継がれるエピソードが存在する。制作スタッフ陣が求めていたのは、頭脳明晰な優等生としての表の顔と、冷酷無比な殺人鬼「キラ」としての裏の顔を、呼吸一つで切り替えられる規格外の演技力だった。
審査の場で宮野が披露した演技は、立ち会ったアニメ制作陣を一瞬で沈黙させたという。単に声のトーンを変えるのではない。一見爽やかな好青年のセリフの奥底に、底知れぬ選民思想と冷酷な狂気を滑り込ませたのだ。特に、彼が発した独特の笑い声と静けさのギャップは、マッドハウスのクリエイターたちに「月(ライト)がここにいる」と確信させるのに十分な破壊力を持っていた。