東京・虎ノ門や新橋周辺に整然と立つ「森ビル」の番号。その始まりは、横浜市立大学の教授を務めていた学術肌の経営者、森泰吉郎の手によって打ち立てられた。関東大震災と太平洋戦争という二度の壊滅的打撃を経験した泰吉郎は、耐火構造のビル建設こそが都市の再建に不可欠だと直感。大学を辞し、本格的に不動産開発の世界へと身を投じた。
泰吉郎の手腕は驚異的だった。1990年代初頭には米フォーブス誌の長者番付で「世界一の富豪」と評されるまでに至る。日本の高度経済成長期と軌を一にして拡大を続けたこのファミリーは、まさに日本を代表する企業家家系図の筆頭格としてその名を刻むこととなった。