化学の世界において基本中の基本とされる物質でありながら、一般には名称の混同や性質の誤解が少なくありません。水酸化ナトリウムの化学式は「NaOH」であり、ナトリウムイオン($Na^+$)と水酸化物イオン($OH^-$)が1対1の比率で結合したイオン結晶です。
産業界や現場で頻繁に使われる「苛性ソーダ(カスティックソーダ)」という呼び名は、水酸化ナトリウムの慣用名(通称)であり、物質としては全く同一のものを指します。「苛性」という言葉には「生体を腐食し、組織を侵食する」という意味が込められており、英語の「caustic(腐食性の)」に由来する歴史的な名称です。
水酸化ナトリウムが水に溶けると、次のような電離式に従って水中でほぼ100%電離します。
$NaOH \rightarrow Na^+ + OH^-$
水酸化ナトリウム水溶液の性質として際立っているのが、極めて強力なアルカリ性(高濃度ではpH14に達する)を示す点です。水溶液は無色透明で、手で触れると皮膚表面の角質層が溶かされることによる特有のぬるぬるした感触が生じます。また、固体状態では空気中の水分を自ら吸収してドロドロに溶ける「潮解性」を持ち、空気中の二酸化炭素を吸収して炭酸ナトリウムへと変質しやすいという化学的特徴も備えています。