世間一般には「テレビに出なくなった=落ちぶれた」という短絡的な見方をされることがあります。しかし、沢田研二が地上波の懐メロ特番や大型歌番組に出演しないのは、オファーがないからではなく、彼自身が自らの意思でテレビ出演を辞退しているからです。
その背景には、「生のコンサートこそが音楽の真実である」という強固な哲学があります。テレビ番組の制約された尺の中でサビだけを歌うことや、演出優先の環境で歌うことを潔しとせず、チケット代を払って会場に足を運んでくれる観客と1対1で対峙する空間を何よりも重んじています。ヒット曲の連発だけに頼らず、近年のアルバムに収録された反戦や平和、命の尊さを歌うメッセージソングをセットリストの中心に据える姿勢も、彼が「過去の人」ではなく「現在進行形の表現者」である証左です。
この徹底した現場主義は、ファン層の地殻変動を生み出しています。かつての親衛隊世代が孫を連れて来場するだけでなく、映画『土を喰らう十二ヵ月』をきっかけにジュリーのファンになった20代・30代の若者が客席に急増しています。「本物のロックを歌う渋い老人」として再定義された沢田研二は、ノスタルジーを消費する対象ではなく、今を生きる表現者として熱狂的な支持を集めています。