インターネット上の掲示板やSNSでは、パッカー車に関して「なんでも放り込めば無制限に小さくなる魔法の粉砕機」「強力だからどんな家庭ゴミでもまとめて処理できる」といった短絡的な誤解が散見される。しかし、現実の塵芥車の構造は密閉された圧力釜のようなものであり、ひとたび禁忌事項が侵されれば重大な都市災害を引き起こす。
その最たる例が、ゴミ収集車の火災原因となるスプレー缶やカセットボンベ、そして2020年代以降に被害が激増しているリチウムイオン電池の混入だ。パッカー車のプレス板がスプレー缶を押し潰した瞬間、缶内に残存していたLPガスやジメチルエーテルなどの可燃性高圧ガスが一気に噴出する。そこに、金属同士の摩擦火花やプラスチックの静電気、あるいはリチウムイオン電池が押し潰されて発生したショートの火花が引火し、ホッパー内部で爆発的火災が発生するのだ。
「ほんの少量のガス抜き忘れ」が、車体に甚大な損傷を与えるだけでなく、周囲の住宅街や歩行者を巻き込む大惨事へと発展する。車体内部で火災が発生した場合、パッカー車の構造上、外側から消火器を噴射しても奥まで消火剤が届かない。作業員は安全を確保した上で、近隣の公園や広場などの安全な空き地に車両を緊急移動させ、ゴミ収集車の排出板の仕組みを用いて燃え盛るゴミを車外へ強制排出(エジェクト)し、消防隊の放水を待つという決死の初動対応を迫られることになる。
「ゴミ収集車がすべてを解決してくれる」という思い込みは完全な誤謬であり、車両の破砕能力が高いからこそ、市民の分別ルール順守が絶対の安全防壁として機能している現実を忘れてはならない。