本作最大のミステリーにして、最終話『我が子へ』における最もショッキングな焦点が「西園寺世界の妊娠の真偽」です。
誠との関係が破綻しかけた終盤、世界は「生理が来ない」と妊娠を告白し、誠をつなぎ止めようとします。しかし誠の心はすでに言葉へと戻っており、邪魔者扱いされた世界はクリスマスイブの夜、誠の自宅アパートを訪れ、包丁で誠を滅多刺しにして殺害しました。
その後、誠の変わり果てた遺体を発見した言葉は、世界の携帯電話を使って彼女を学園の屋上へと呼び出します。そこで繰り広げられた対決の末、言葉は隠し持っていた鋸(のこぎり)で世界の頸動脈を切り裂いて殺害。返り血を浴びながら世界の腹部を切り開き、子宮を確認した言葉は冷徹に言い放ちました。
「やっぱり……嘘じゃないですか。中には誰もいませんよ」
この凄惨な確認作業により、世界の妊娠は事実無根であったことが示されました。医学的な観点からは、誠を失う恐怖と過度なストレスによる「心因性無月経(想像妊娠)」であった説が有力です。世界自身も自らの嘘に精神を侵食され、引き返せない破滅へと突き進んでしまった悲劇と言えます。