外見や日常の簡単な受け答えからは障害があるように見えないため、周囲から長年見過ごされてきたケースで特に多いのが境界知能(IQ70〜84前後の領域)や軽度の知的能力障害である。かつての学校教育や地域社会においては、手厚い支援体制が整っていなかったこともあり、「勉強が苦手な人」「要領が悪い人」というラベルだけで社会生活へと送り出されてきた歴史的背景がある。
単純作業を中心とした職場や、周囲の家族による手厚いフォローがあれば、社会人として大きな破綻なく過ごせてしまうことも少なくない。しかし、結婚や出産、親の独立、さらにはデジタル化に伴う行政手続きの複雑化など、生活環境の変化や課題の高度化に直面した途端、それまで隠れていた適応の困難さが一気に噴出する。
本人は自らの生きづらさに無自覚であることも多く、「なぜ自分が怒られているのか」「なぜ手続きができないのか」を理解できないまま孤立を深めていく。この認識のズレこそが、子ども世代との間に埋めがたい溝を生み出す根源となっている。