もっとも、ここに至る道のりは決して平坦ではなかった。着工前、関係者の間では激しい議論が巻き起こっていた。「思い出の詰まった建物を解体するのは歴史の破壊だ」とする保存派と、「耐震性に問題を抱える老朽校舎の維持は限界だ」とする推進派が対立。計画は一時、完全に行き詰まった。
ブレイクスルーをもたらしたのは、既存の骨組みを残したまま最新機能を組み込む「リジェネラティブ・リノベーション」の提案だった。解体瓦礫を最小限に抑え、施工時のCO2排出量を新築時の3分の1に抑える計画は、環境意識の高い若い世代の強い支持を獲得。古い柱や梁の一部を意匠としてあえて露出させることで、過去の記憶と未来の技術が同居する独特の景観が完成した。