1989年1月7日午後2時36分、当時の内閣官房長官であった小渕恵三が記者会見場に姿を現した。彼が掲げた「平成」と書かれた墨書の額縁は、昭和から新しい時代への移行を象徴する歴史的カットとして人々の記憶に深く刻み込まれている。
しかし、あのカメラの前で見せた穏やかな表情の影には、極限の緊張が存在していた。改元の決定通知が届く直前まで、複数の元号候補案が拮抗しており、決定は文字通りギリギリの土壇場で行われたという。小渕恵三が額縁を掲げたあの瞬間の裏には、政治的意図や学者たちの思惑が複雑に絡み合った密約と駆け引きが存在していたことが、近年の研究で改めて判明している。