フォント選定において、デザインの見た目以上にリスク管理として知っておかなければならないのが「権利関係」と「テキスト互換性」の落とし穴です。ネット上には「無料フォントまとめ」と題したキュレーション情報が無数に存在しますが、そこには重大な法規的・技術的リスクが見落とされています。
まず警戒すべきは「dafont.com」などの有名投稿サイトに潜む商用ライセンス違反です。dafontの利用規約や個別ダウンロードページには明瞭に「Font ini HANYA untuk penggunaan pribadi (Personal Use Only)」と記されているケースが全体の過半数を占めます。これは「個人が自宅の部屋に飾るカードを印刷する」ことは許諾されていても、「minneやCreema、BASEで販売するハンドメイド商品のラッピングに使う」「店舗のショッパーやショップカードに印字する」といった行為は明確な契約違反・著作権侵害に該当することを意味します。ビジネスや収益が発生する媒体で使用する場合は、「fontadvice.com」のまとめに見られるような「commercially free(商用利用無料・クレジット表記不要)」が法的に保証された書体か、SIL Open Font License等のオープンソースフォントであることを確実に確認しなければなりません。
もう一つの技術的な罠が、SNSを中心に拡散している「特殊文字コピペツールによる『Thankyou♡ ☁️﹢˖ ☆』などのUnicode装飾」です。これらはフォントファイルではなく、特殊な記号文字(数学用英数字記号やUnicode拡張領域)を組み合わせた文字列に過ぎません。PCやスマートフォンのブラウザ上では可愛らしく表示されても、以下のような致命的な弊害を抱えています:
- 環境依存による「豆腐(文字化け)」:受信者のOS環境(古いAndroid端末や特定バージョンのWindows)では四角い枠(□)に化け、文字として認識されません。
- 音声読み上げエンジンの誤作動:視覚障害者向けのスクリーンリーダーでは「Thank you」と発音されず、文字コード名が機械的に読み上げられるため、情報アクセシビリティの観点から商用メディアでは極めて不適切です。
- 印刷用Illustrator等への取り込みエラー:DTP現場のRIP処理時にグリフ抜けが発生し、印刷事故の原因になります。
ペーパーアイテムやオフィシャルな制作物において「かわいいThank you」を表現したいのであれば、特殊文字コピペに頼るのではなく、正規のスクリプト体 フリーフォントを正しくIllustratorやCanvaに読み込ませて組版するのが鉄則です。