視覚情報は前方約180度に限られるが、聴覚は周囲360度の危険を察知するセンサーとして機能する。警察庁の事故統計や分析レポートでも、歩行中の聴覚遮断が反応速度を著しく低下させることが指摘されている。
接近する車両のエンジン音、緊急車両のサイレン、あるいは駅ホームでの接近アナウンス。これらが遮断された歩行者は、予期せぬ事態に対して回避行動をとるまでのタイムラグが通常の約1.5倍から2倍に延びる。近年急増する電動キックボードや静音性の高い電気自動車(EV)の普及が、この「無音の死角」に拍車をかけている格好だ。
駅構内での線路転落事故や階段での接触トラブルにおいても、イヤホン装着が一因となった事例が報告されており、鉄道事業者や行政は危機感を強めている。