インターネットで「首の悪性リンパ腫のしこり写真」を検索すると、首の片側がボコッと大きく隆起した症例写真や、赤丸で患部を囲んだ画像が多数ヒットします。これらを見て「自分のしこりはここまで外見に出ていないから大丈夫だ」「赤みがないから癌ではない」と胸をなでおろす方がいますが、ここに医療上の極めて大きな盲点が存在します。
悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球ががん化し、主にリンパ節で無制限に増殖する疾患です。首のリンパ節(頸部リンパ節)は皮膚の奥深く、筋肉(胸鎖乳突筋など)の深層や皮下組織に位置しています。初期段階では外見上の皮膚変化(発赤や潰瘍)を伴うことは極めて稀であり、首の表面は普段と全く変わらない皮膚色のまま、触ると奥に塊が存在するという状態が続きます。外見から明らかに瘤(こぶ)として確認できる写真は、腫瘤が数センチメートル以上に巨大化し、皮下組織を押し上げている進行例に過ぎません。
臨床現場において、専門医が視診だけで悪性リンパ腫と確定診断することは絶対にありません。超音波(エコー)検査でリンパ節の長径と短径の比率、血流シグナル、内部構造の消失を確認し、最終的には組織の一部を切り取る「生検」を行って初めて正体が判明します。スマートフォンの画面越しに写真と自分の首筋を見比べる行為は、診断の安心材料にはなり得ず、むしろ適切な受診時期を遅らせるリスクを孕んでいます。