SNSや獣医師相談窓口、しつけ教室の現場では、「座るとすぐに手を舐めに来て止まらない」「来客の手を執拗に舐めて困る」といった飼い主の切実な悩みが数多く寄せられています。当編集部がドッグトレーナーおよび臨床獣医師へ実施したヒアリング調査では、こうした舐め癖の約7割に「飼い主の無意識の報酬化」が関与している実態が浮き彫りになりました。
愛犬が手を舐めてきた際、飼い主が無意識に「はいはい、わかったよ」「よしよし」と声をかけながら撫で返してしまうと、犬の脳内では「舐める=大好きな飼い主の注目を獲得できた成功体験」として強固にインプットされます。その結果、退屈なときや寂しいときにエスカレートし、飼い主の手を拘束するように舐め続ける行動パターンが固定化してしまうのです。
一方で、保護犬シェルターなどの観察記録からは、過去に十分な社会的接触を得られなかった個体や、ケージ内で長時間過ごしたストレス過多な犬ほど、人の手や自己の身体に対する異常な舐め執着を示しやすい傾向が確認されています。単に「やめさせる」ことばかりに目を向けるのではなく、犬が日常の中でどれだけの精神的充足感と安心感を得られているかという生活環境全体の見直しが求められます。