遅発性ジスキネジアは、主に統合失調症や双極性障害、うつ病の治療に用いられる抗精神病薬、あるいは胃腸薬(スルピリドやメトクロプラミドなど)を数か月から数年以上にわたって継続服用した後に現れる神経学的障害です。患者本人の意思とは無関係に筋肉が勝手に動いてしまう「不随意運動」を特徴とします。
なぜこの現象が起きるのか。長年にわたる研究によって、薬剤が脳内のドパミンD2受容体を長期間ブロックし続けることで、脳が「ドパミンが足りない」と誤認し、受容体の数を増やしたり感度を極限まで高めてしまう「ドパミン受容体の超感受性(アップレギュレーション)」が一因であることが判明しています。さらに、2025年後半に発表された最新の基礎研究プレビューや学術報告でも、大脳基底核における神経回路の可塑的変化や酸化ストレスの蓄積が複合的に関与している事実が改めて裏付けられました。
過去に「不治の副作用」と恐れられていた背景には、一度形成された神経回路の過敏状態が、原因薬剤を減量・中止しても簡単には元に戻らないという不可逆性にありました。薬を減らすと一時的に受容体の遮断が解け、かえって激しい不随意運動が吹き出す「離脱性ジスキネジア」が生じることもあり、現場の医師にとっても治療のさじ加減が極めて困難だった歴史が存在します。