番組が10年以上にわたり愛され続ける大きな要因が、猫の邪魔を一切しない洗練された演出設計です。とりわけ歴代ナレーションを担当してきたキャスト陣の顔ぶれは、俳優から声優まで極めて豪華な布陣で知られています。
初期から番組のトーンを決定づけた塚本高史氏をはじめ、落ち着きと包容力のある語り口で視聴者を惹きつける宮﨑あおい氏、ユーモラスで温かみのある山田孝之氏、透明感にあふれる満島ひかり氏、さらに中村獅童氏や福士蒼汰氏、水川あさみ氏、上白石萌音氏など、多彩な実力派が歴代の語り手を務めてきました。特筆すべきは、彼らが「猫のセリフ」をアテレコするのではなく、あくまで岩合氏の歩みと猫の仕草を静かに見守る観察者としての距離感を崩さない点です。この抑制された語り口が、人間側の都合を押し付けない番組独自の心地よさを生み出しています。
また、耳に残る音楽・テーマ曲の存在も欠かせません。作曲家・高野正樹氏が手掛けたメインテーマ「ネコ歩き」の軽快なウクレレとアコースティックなサウンドは、イントロが流れるだけで視聴者を一瞬にして異国の小路へと連れ去ります。劇伴音楽も、猫が獲物を狙って身構える緊張感や、日陰でまどろむ脱力感を繊細に描写。過度なオーケストレーションを排したアコースティック編成が、映像の美しさを最大限に際立たせています。