ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「300万ドルが手に入ったらすぐに日本の銀行へ送金して円に替えれば一生遊んで暮らせる」といった楽観的な言説が散見されます。しかし、ここには金融の現場を知らない人間が陥りやすい2つの決定的な盲点が存在します。
第1の盲点は、外貨両替手数料比較におけるコストの落とし穴です。300万ドルという巨額資金を一般的な大手都市銀行で日本円に両替(円転)しようとした場合、標準的な為替手数料(スプレッド)は1ドルあたり片道1円程度に設定されているケースが少なくありません。300万ドルに対して1円のスプレッドが適用されれば、ボタンを一度クリックして両替するだけで300万円もの手数料が銀行側に差し引かれることになります。
ネット証券やFX口座の現引き(現物受け渡し)機能を活用すれば、スプレッドを1ドルあたり数銭(数万円程度)まで圧縮できるにもかかわらず、知識不足から数百万円単位のコストをドブに捨ててしまうケースが現場では頻発しています。
第2の盲点は、海外送金税務署の監視システムです。「海外の口座にあるお金を日本に持ち込めばバレないのではないか」という安易な思い込みは、現代の税務行政において完全に通用しません。内国税の適正化を目的とした「国外送金等調書制度」により、金融機関を通じて1回あたり100万円を超える海外送金・受取が行われた場合、銀行側から国税庁へ調書が自動的に送付されます。
さらに、その年の12月31日時点で合計5,000万円を超える海外資産を保有している居住者には「国外財産調書」の提出が義務付けられており、未提出や虚偽記載には刑事罰や重加算税のペナルティが科されます。世界中の金融機関が口座情報を相互共有する「CRS(共通報告基準)」のネットワークが張り巡らされている現在、巨額の国際マネーを当局の目から隠し通すことは不可能です。