比例代表制で政党ごとの議席数を決定する際に用いられる世界標準の計算方式が、ベルギーの法学者ヴィクトル・ドントが考案した「ドント式」です。難解な数式に見えますが、ルールは「各党の総得票数を整数(1、2、3、4……)で順番に割っていく」ことだけです。
定数5議席の架空の比例ブロックを例に、A党、B党、C党、D党の争いをシミュレーションしてみましょう。
表内の商(割り算の答え)を大きい順に並べ替えると、以下の通りになります。
- 1位:120,000(A党 ÷1) ➡️ A党が第1議席獲得
- 2位:80,000(B党 ÷1) ➡️ B党が第2議席獲得
- 3位:60,000(A党 ÷2) ➡️ A党が第3議席獲得
- 4位:50,000(C党 ÷1) ➡️ C党が第4議席獲得
- 5位:40,000(A党 ÷3) ➡️ A党が第5議席獲得(※B党の÷2と同値の場合は公選法規定のくじ等で決定)
最終結果は、A党が3議席、B党が1議席、C党が1議席、D党が0議席となります。ドント式は計算が非常に明快である反面、数学的な特性上、得票率の高い大政党に議席が余分に転がり込みやすいという特徴を持っています。
衆議院と参議院の決定的な違い:「拘束名簿式」と「非拘束名簿式」
比例代表制と一口に言っても、衆議院と参議院では運用のルールが根本的に異なります。ここを取り違えている有権者が非常に多く見受けられます。
- 衆議院(拘束名簿式):政党側があらかじめ当選順位(1位、2位、3位…)を確定させた名簿を提出します。有権者は政党名のみを投票用紙に書きます。政党の獲得議席数に応じて、名簿の上位者から順に当選が決まります(※同順位の場合は惜敗率順)。
- 参議院(非拘束名簿式):政党名だけでなく、名簿に載っている特定の候補者個人名を書いて投票することができます。個人名の得票数が多い候補者から優先的に当選順位が繰り上がる仕組みです(※特定枠の候補者を除く)。
衆議院では「党の統制」が強く働き、参議院では「候補者個人の知名度や支持組織の動員力」が直接結果を左右する設計になっているのです。