日本の幼児教育の礎を築いた倉橋惣三は、かつて子どもが自ら環境に関わり、内なる欲求から遊ぶ「自己充実」の重要性を説いた。決められた見本通りに赤と黒の虫を量産させる指導は、倉橋が最も戒めた形式主義にほかならない。
文部科学省が掲げる幼稚園教育要領においても、環境を通して行う教育や、心情・意欲・態度の育成が主軸に据えられている。指示通りに動く従順さを測るのではなく、子どもが「この虫はどこへ飛んでいくんだろう」「どんな葉っぱが好きなのかな」と想像を膨らませることこそが、学びの原点だ。
指導案に書かれた目標を達成するためだけに、保育者が子どもの手を引いて完成させては本末転倒である。青いてんとう虫がいたっていいし、斑点が星の形をしていたって何の問題もない。規格外の発想を面白がり、受け止める大人の度量が問われている。