松戸キャンパスの成り立ちを紐解くと、総合大学として発足した千葉大学の枠組みよりもさらに古い、日本の近代農学教育の黎明期に行き当たります。その起源は1909年(明治42年)に設立された「千葉県立園芸専門学校」、のちの官立「東京高等園芸学校」です。日本における高等園芸教育の発祥の地として、国策のもと東京近郊の風光明媚な高台(旧水戸藩主・徳川昭武の別邸である戸定邸に隣接する敷地)に拓かれたのがこの地の始まりでした。
戦後の1949年、国立学校設置法によって千葉師範学校や千葉医科大学などとともに包括され「千葉大学」が誕生した際、多くの文理学部が千葉市内の旧軍用地(現在の西千葉キャンパス)へと集約されていく過程を辿りました。しかし、園芸学部だけは植物栽培のための特殊土壌、温室群、品種改良のための実験圃場、樹齢100年を超える見本園を擁していたため、簡単に土地を移転させることが不可能でした。この歴史的・物理的必然性こそが、現在も松戸キャンパスが独立した聖域として存続している決定的な理由です。
キャンパス内には現在も、大正から昭和初期の面影を留める「フランス式幾何学庭園」や「イタリア式露壇庭園」が良好な状態で保存されており、敷地そのものが近代造園史の生きた教材となっています。