調理の仕上がりを左右する最大の分水嶺は、加熱前の下処理にあります。ささみの中心を通る太い腱(筋)は、加熱すると強固に収縮し、肉を歪ませて食感を損なう元凶です。包丁で削ぎ落とそうとすると身が崩れて歩留まりが悪くなるため、フォークを活用した筋取りが最も合理的です。
ささみの先端から出ている白い筋の端をキッチンペーパーで滑らないようしっかり掴み、筋をフォークの歯の間に挟み込みます。あとはフォークを肉の方向へゆっくり押し出すだけで、身を傷つけることなく約5秒で筋だけを綺麗に引き抜くことができます。
筋を取り除いた後に施すべきパサつかない裏ワザは、「観音開き」と「保水コーティング」の2ステップです。厚みのある部分に包丁を入れて均一な厚さに開き、全体の火の通りを均一化させます。その後、ささみ1本に対して「酒小さじ1/2、砂糖ひとつまみ、塩少々」を揉み込み、最後に薄く片栗粉をまぶします。砂糖の親水性と片栗粉のデンプン膜が二重の障壁となり、フライパン調理でもレンジ調理でも肉汁の流出を極限まで食い止めます。