多くの人が疑問を抱くのが、「ベッドの下はどういう構造になっていたのか」という物理的な仕組みです。昭和の回転ベッドは、見た目の派手さに反して機械工学的には非常に頑丈かつシンプルな構造で作られていました。
中心部には太い回転軸(ピボット)と大型ベアリングが設置され、周囲の荷重を支えるために複数のウレタン製キャスターが円形スチールレールの上を走行する設計となっていました。動力源には小型の減速機付きACモーター(0.1kW〜0.2kW程度)が採用され、回転速度は1分間に約1回転から1.5回転という極めて緩やかなスピードに制御されていました。これ以上の速度で回転させると、利用者が激しい三次元酔い(乗り物酔い)を引き起こすためです。
さらに技術的な難所だったのが「給電方式」です。ベッドのヘッドボードに読書灯やマッサージスイッチ、シガーソケットなどを配置する場合、通常の配線ではベッドが回るにつれてコードがねじ切れてしまいます。そのため、電車の台車や産業用ロボットなどに用いられる「スリップリング(回転集電器)」と呼ばれる特殊な接点端子板を組み込み、連続回転しても通電が途切れない高度な給電システムが構築されていました。
ここで検索ユーザーの多くが混同しがちなのが、近年シニア市場で需要が急拡大している「介護用回転ベッド」との混同です。両者は名称こそ似ていますが、設計思想も構造も完全に異なります。
昭和のレジャーホテル用ベッドが「360度エンドレスに水平回転し続けるエンタメ装置」であるのに対し、フランスベッドやパラマウントベッドなどが開発する介護用回転ベッドは、「ベッドの中央部が90度だけスムースに回転し、端座位(ベッドの端に腰掛けた状態)を作って立ち上がりや車椅子への移乗を補助する医療・福祉機器」です。後者は安全基準(JIS規格等)に適合した厳格な福祉用具であり、昭和の回転ベッドとは全く別の進化を遂げたテクノロジーと言えます。