映画ターミナルの実話と結末の真相|空港に18年住み続けた男の光と影

映画ターミナルの実話と結末の真相|空港に18年住み続けた男の光と影

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映画『ターミナル』でトム・ハンクスが演じた主人公ビクター・ナボルスキーには、実在のモデルが存在します。その人物こそ、イラン出身のマーハン・カリミ・ナセリ氏(通称:サー・アルフレッド)です。ナセリ氏は1988年8月から2006年7月までの約18年間、フランス・パリのシャルル・ド・ゴール空港第1ターミナル内のベンチで生活を続けました。

彼が空港に留まることになった発端は、亡命手続きに伴う身分証明書の紛失と、イギリスへの入国拒否でした。書類不備によりフランスへの入国も他国への出国もできなくなったナセリ氏は、空港のトランジットエリアという「法的なエアポケット」に取り残されることになります。報道各社の当時の取材記録によると、スピルバーグ監督率いるドリームワークス社は、ナセリ氏に対して人生の映画化権料として約25万〜30万ドル(当時のレートで約3,000万円以上)を支払ったとされています。

映画では母国の情勢回復とともに主人公が空港を出て祖国へ帰還しますが、現実のナセリ氏の歩みは遥かに複雑でした。1999年に人道的な滞在許可証と旅券が発行されたものの、長年の孤立生活によって精神に変調をきたしていた彼は書類への署名を拒否し、自ら空港に留まる道を選び続けたのです。その後、2006年に体調悪化で入院し、一度は保護施設へ移留されましたが、2022年秋に再びシャルル・ド・ゴール空港へと戻り、同年11月12日にターミナル2Fで心臓発作のため77歳で逝去しました。映画の持つ温かなユーモアの陰には、国家と個人のアイデンティティを巡る壮絶な現実が横たわっていました。

佐々木 一輝
著者

佐々木 一輝

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。