物語のリアリティを支える上で欠かせなかったのが、松岡昌宏演じる精神科医・井原侑市の存在です。尚に婚約破棄された後も、医師としての使命感と一人の人間としての情愛の間で揺れ動きながら、彼女の治療に人生を捧げていきます。
松岡は冷徹に見えるエリートの内側に潜む、深い慈愛と葛藤を見事に表現しました。感情を過剰に爆発させることなく、静かな眼差しと抑制された台詞回しで魅せる演技は、彼のキャリアにおける新たなマイルストーンとなりました。
医療従事者としてのプロフェッショナリズムと、元婚約者を救えない無力感。その狭間でもがき続ける侑市の姿があったからこそ、病気の残酷さと医学の希望が嘘偽りなく描かれました。