本作の評価を決定づけたのは、主要キャスト陣による神懸かり的なアンサンブルです。当時まだ10代後半だった濱田岳は、巻き込まれ型の主人公・椎名役を圧倒的なリアリティで演じ切りました。どこか頼りなくも誠実で、理不尽な状況に戸惑いながらも他者を思いやる眼差しは、観客が物語へ感情移入するための完璧なナビゲーターとなりました。
一方、複雑な二重構造の主人公を演じた瑛太(現・永山瑛太)の怪演は圧巻の一言に尽きます。飄々として掴みどころのない「河崎」の軽薄さと、その奥底に潜む「ドルジ」の底知れぬ怒り、絶望、そして繊細な優しさ。立ち姿や視線の揺らぎひとつで二つの魂を体現した彼の演技は、第81回キネマ旬報ベスト・テン助演男優賞をはじめとする数々の映画賞で極めて高い評価を獲得しました。
さらに、正義感が強く不器用なヒロイン・琴美を凛々しく演じた関めぐみ、物語の精神的支柱であり圧倒的なカリスマ性を放った本物の河崎役・松田龍平、そして謎めいたペットショップ店長・麗子を演じた大塚寧々など、すべての配役が奇跡的な調和を生み出しています。のちに中村義洋監督と濱田岳は『フィッシュストーリー』『ゴールデンスランバー』『ポテチ』など伊坂幸太郎作品の映画化で名タッグを組み続けますが、その原点となったのが本作でした。