外科切除が難しい部位(顔面、会陰部など)への発生や、すでに転移が見られるステージ、あるいはグレード3の高悪性度症例に対しては、内科的アプローチが中心となります。
現在の内科治療の柱となっているのが、犬用分子標的薬「トセラニブ(商品名:パラディア)」です。肥満細胞の増殖に関わる「c-kit遺伝子変異」を持つ腫瘍に対して特に高い効果を発揮します。術前の遺伝子検査によってc-kit変異が確認された症例では、腫瘍の縮小や病勢コントロールにおいて高い奏効率が実証されています。
さらに従来の抗がん剤(ビンブラスチン、ロムスチンなど)とステロイド(プレドニゾロン)を組み合わせた併用プロトコルも改良が進んでおり、副作用を最小限に抑えながら病勢を長期間抑え込む実績が蓄積されています。分子標的薬の登場により、「切除不能=打つ手なし」だった時代から、愛犬の元気と食欲を保ちながら共存を目指す治療へと大きく転換しています。