「姫の虎退治」の根幹をなすプロットは、一般的な武勇伝とは根本的に異なります。主たる登場人物は、深窓の令嬢として育てられた若き姫君、危機に際して逃走または無力化してしまう近習・従者たち、そして人界を脅かす圧倒的脅威としての大虎です。
物語の標準的なあらすじは、姫の一行が山道や異国の地で孤立した際、突如として巨躯の虎に襲撃される場面から始まります。刀槍を携えた屈強な武士たちが恐怖にすくみ上がる中、逃げ場を失った姫は取り乱すことなく前へ進み出ます。姫が手にしたのは強大な武器ではなく、手元にあった鏡、着物の帯、あるいは油や火の粉といった日用品でした。
虎が飛びかかろうとした瞬間、姫は光の反射や機転を利かせた罠を仕掛け、虎の視覚と警戒心を逆手に取って自滅へと追い込みます。物理的な腕力でねじ伏せるのではなく、相手の心理的隙を突いて退散・討伐させるというカタルシスこそが、この伝承が時代を超えて語り継がれる最大の要因となっています。