国宝の城はなぜ5つだけ?専門家が明かす選定の真相と重要文化財との違い

国宝の城はなぜ5つだけ?専門家が明かす選定の真相と重要文化財との違い

国宝の城はなぜ5つだけ?専門家が明かす選定の真相と重要文化財との違いについての真相をお届けします。

国宝の城をめぐる歴史の中で、近年最大のトピックは2015年の松江城の国宝再指定です。松江城は戦前の旧国宝制度下で国宝に指定されていたものの、昭和25年の文化財保護法施行に伴い重要文化財へと改められ、以後は国宝指定への道が閉ざされていました。

風向きを劇的に変えたのは、2012年に松江神社内で発見された2枚の「慶長十六年」の祈祷札でした。天守内の柱に残る釘穴の位置と祈祷札の釘穴が寸分違わず一致したことで、天守の完成時期が1611年であることが科学的・考古学的に完全に特定され、63年ぶりの国宝昇格が実現したのです。

一方で、城郭ファンの間で頻繁に話題に上がるのが福井県・丸岡城の国宝化問題です。

丸岡城は長年「現存最古の天守(天正4年・1576年築)」と通説で語られてきました。しかし、2019年に丸岡城国宝化推進専門委員会が公表した学術調査結果によると、天守の主要部材の年輪年代測定や放射性炭素年代測定により、木材の伐採年代が寛永年間(1620年代後半〜1630年代)である可能性が判明しました。

「最古の城だから国宝に昇格できる」という単純な推論は、実証科学の進展によって修正を迫られています。国宝指定の門戸が開かれるかどうかは、築城年代の古さそのものよりも、建築史上の独自性とそれを証明する一次資料の整合性にかかっています。

田中 結衣
著者

田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。