採取者がもっとも警戒しなければならないのが、ウルシ科に属する有毒植物です。タラノキの新芽とヤマウルシの若芽は、春の芽吹き始めの時期において、赤褐色から黄緑色を帯びた色合いや芽の立ち上がり方が酷似しており、遠目には見分けがつきにくい場合があります。
ヤマウルシとタラの芽の違い|ウルシオールが引き起こす恐怖の症状
ヤマウルシとタラの芽の違いを把握する上で、まず知っておくべきはその毒性メカニズムです。ウルシ科植物には「ウルシオール(Urushiol)」という油性の毒素が含まれています。この成分は皮膚のタンパク質と結合してアレルゲンとなり、激しいアレルギー性接触皮膚炎を引き起こします。
皮膚科専門医の臨床報告によると、ウルシの新芽によるかぶれ症状は、接触後24時間から48時間ほどの潜伏期間を経て発現します。患部に強い熱感を伴う赤斑が現れ、やがて無数の小水疱が生じて耐え難い掻痒感(かゆみ)に襲われます。掻き壊すことで二次感染を招き、顔面や陰部など皮膚の薄い部位へ全身性に広がるケースも少なくありません。
さらに恐ろしいのは、タラの芽と誤認して口に入れてしまった場合です。口腔内から食道、胃粘膜に至るまでウルシオールによる激しい炎症と潰瘍が生じ、喉の粘膜が高度に腫脹して呼吸困難に陥る危険すらあります。加熱調理してもウルシオールは完全には分解されないため、「天ぷらに揚げたから無毒化された」という認識は完全な誤りです。
ハゼノキとヌルデの見分け方|葉軸の「翼」と樹液の変化を見逃すな
ウルシ科にはヤマウルシのほかに、西日本を中心に自生するハゼノキや、全国の道端・荒れ地に繁茂するヌルデが存在します。
まずハゼノキの芽の見分け方ですが、ハゼノキは成木になると幹が灰褐色で滑らかになり、新芽の段階では赤みが強く、葉の表面に独特の光沢としっとりした質感があります。毛がほとんどなくツルツルしている点が、微毛の生えるタラノキと異なります。
一方、ヌルデとタラの芽の違いは、葉の軸(葉軸)を観察することで明瞭に判断できます。ヌルデの葉軸には、葉と葉の間に「翼(よく)」と呼ばれる緑色の薄いヒレのような帯状構造が存在します。タラノキの葉軸にこのようなヒレ構造は一切存在しません。また、ウルシ科の植物は枝や芽を傷つけると乳白色の樹液が染み出し、空気に触れると酸化して徐々に黒褐色へ変色するという共通の特徴を持っています。透明な樹液しか出ないタラノキとは、生化学的にも明確な差異があります。