高校生物の記述問題や正誤判定で最も狙われやすいテーマが、アルコール発酵と乳酸発酵の違いです。どちらも「酸素を用いずに解糖系を回して2ATPを得る嫌気呼吸」という根本原理は同一ですが、生成物と生化学的経路には明確な相違点が存在します。
乳酸発酵では、解糖系で生じたピルビン酸が脱炭酸反応を経ることなく、乳酸脱水素酵素によって直接還元されて乳酸(C₃H₆O₃)になります。炭素数3のピルビン酸がそのまま炭素数3の乳酸へと変わるため、二酸化炭素が一切発生しないという点が最大の違いです。
激しい無酸素運動を行った人間の筋肉内で起こるのは乳酸発酵です。もし人体内でアルコール発酵が起きてしまえば、ダッシュを繰り返すたびに体内にエタノールが生成され、二酸化炭素の気泡で血管が塞がれてしまう事態になりかねません。生物の進化がいかに合理的な代謝経路を選択してきたかが伺えます。