カナヘビの雌雄を見分ける際、最も確実かつ生体に負担をかけないアプローチは、成体に見られる複数の身体的特徴を複合的に観察することです。単一の要素だけで判断しようとすると個体差による誤認が起きやすいため、以下の3つの観察ポイントを順番に照合していく手順が現場の定石となっています。
第1の決定打となるのが、尻尾の付け根(総排泄孔の直下)の膨らみです。カナヘビのオスは、総排泄孔のすぐ後ろの尻尾内部に「ヘミペニス」と呼ばれる2コ1対の交尾器を収納しています。そのため、成熟したオスを腹面側や真横から観察すると、総排泄孔の境目から尾にかけてが「ぷっくりと盛り上がっている」のが確認できます。これに対し、メスには交尾器が存在しないため、胴体から総排泄孔を経て尾の先へと向かうラインが滑らかに細くなっていきます。透明なプラケースの底面越しに観察すると、この厚みの段差は一目瞭然です。
第2の観察ポイントは、お腹の色(腹板の色彩)の違いです。成熟したニホンカナヘビの腹部には明確な体色差が現れます。オスの腹部は全体的に黄味が強く、鮮やかなレモンイエローから山吹色、成熟個体ではオレンジ色に近い発色を見せます。一方、メスの腹部は清潔感のある乳白色やごく淡いクリーム色にとどまり、黄色味が差すことは稀です。個体の栄養状態や脱皮周期によって多少の濃淡はあるものの、白に近いか、はっきりとした黄色を帯びているかは優れた補助線となります。
第3の要素は、頭部の骨格と全体のプロポーションです。オスは縄張り争いや交尾時にメスをホールドするため、顎の筋肉が発達して頭部が大きく横に張り出しています。上から見ると三角形の角が立ったような力強いシルエットを描き、胴体はやや引き締まっています。対してメスは、将来的に体内で卵を育てる必要があるため、頭部が小ぶりで丸みを帯びており、胴体中央部にゆったりとした太さがあります。