西洋の模倣から始まった日本のボンボニエールですが、皇室の引き出物として定着する過程で、独自の美意識と深い精神性が吹き込まれました。なぜ他の品ではなく、この小さな菓子器が選ばれ続け、中身には金平糖が選ばれたのかという点には、日本文化ならではの明快な理由が存在します。
最大の理由は、掌に乗る極小の空間に「日本の伝統工芸技術の粋」を凝縮できる点にありました。金工、漆工、彫金、陶磁器など、日本が世界に誇る匠の技を惜しみなく注ぎ込むことで、海外の賓客に対する文化的なプレゼンテーションとして機能したのです。また、宴席に出席した賓客が衣服の袂(たもと)やポケットに忍ばせて大切に持ち帰り、帰宅後も家族とともに慶びを分かち合えるという実用的な利便性も兼ね備えていました。
そして多くの人が抱く最大の謎が、「なぜ中身が金平糖なのか」という真相です。色鮮やかな金平糖が選ばれた背景には、実用面と象徴面の2つの理由が絡み合っています。
第1に、製造工程に込められた吉祥(めでたい兆し)の祈りです。金平糖は、回転する大きな釜の中で小さな核に糖蜜を幾重にもかけ、14日以上の歳月をかけて少しずつ独特の角(ツノ)を育てていきます。この「途方もない時間と手間をかけてじっくりと丸く大きく育て上げる姿」が、「夫婦が時間をかけて角を丸くしながら円満な家庭を築く」ことや、「皇室が幾世代にもわたり揺るぎなく繁栄を続ける」ことの象徴と見なされたのです。
第2に、優れた保存性と衛生面の実利が挙げられます。湿気の多い日本の気候において、砂糖純度の高い金平糖は極めて保存性が高く、持ち帰りの途中で溶けたり痛んだりする心配がありません。見た目の愛らしさに加え、科学的にも極めて理にかなった選択でした。