菅さんの弔辞全文と山縣有朋の歌が泣かせる理由|銀座の焼き鳥屋秘話

菅さんの弔辞全文と山縣有朋の歌が泣かせる理由|銀座の焼き鳥屋秘話

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弔辞のなかで極めて具体的なエピソードとして語られたのが、2012年自民党総裁選の直前、銀座の焼き鳥屋で行われた3時間の密談です。

当時、自民党は野党に転落しており、民主党政権下での混迷が続いていました。第1次安倍政権を健康問題で無念の退陣に追い込まれ、心身ともに深い傷を負っていた安倍氏は、総裁選への再出馬に対して極めて慎重でした。「一度挫折した人間が再び挑むべきではない」「党内に分断を生むのではないか」と思い悩む安倍氏を、菅氏は銀座の焼き鳥屋へ誘い出しました。

当時の特番インタビューや自著・手記などで菅氏が明かしたところによると、菅氏はテーブルを挟んで次のように語りかけたといいます。

「総理、あなたは西郷隆盛になるべき人だ。大久保利通の役目は私が引き受ける。汚れ役も裏方の調整もすべて私がやるから、あなたは国家のビジョンを掲げて先頭に立ってほしい」

この「西郷と大久保」の役割論こそが、安倍氏の再起の引き金を引きました。3時間にわたる説得の末、安倍氏は「菅さんがそこまで言うなら、私はもう一度受けて立つ」と決意を固めたのです。この夜の会談がなければ、歴代最長となる第2次安倍政権の誕生も、アベノミクスによる景気回復も、外交安全保障体制の再構築も存在しませんでした。菅氏にとってこの焼き鳥屋の記憶は、単なる昔話ではなく、二人の政治生命を賭けた運命の原点だったのです。

林 結菜
著者

林 結菜

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。