学期末に小学校から持ち帰るリコーダーの洗い方を巡っては、保護者の良かれと思った除菌行動が裏目に出るケースが後を絶ちません。大手SNSやQ&Aサイトに寄せられた実態調査とリペア現場の証言から、家庭内で特に多発している「3大NG洗浄事故」の構造的要因を分析します。
第1の事故は、食洗機の使用と熱湯消毒です。油汚れがすっきり落ちる食器洗い乾燥機に「食器と同じプラスチックだから」と投入したり、熱湯を回しかけて煮沸消毒を試みたりするケースです。リコーダーに使われるABS樹脂の耐熱温度は約60〜70℃前後に過ぎません。食洗機の高温洗浄や乾燥ヒーターの熱風(80℃以上)に晒されると、管体が熱で歪み、ジョイント部がはまらなくなったり、歌口のエッジ(ラビューム)が変形して音が掠れて鳴らなくなります。
第2の事故は、高濃度アルコールによる消毒です。衛生意識の高まりから、エタノールスプレーを直接吹きかける家庭が急増しました。しかし、ABS樹脂に高濃度アルコールが付着すると、内部応力によって分子結合が破壊される「ケミカルクラック(環境応力割れ)」が発生し、管体に細かい無数のひびが入ったり、白く濁って強度が著しく低下します。
第3の事故は、塩素系漂白剤(泡ハイター等)の原液浸け置きです。カビを根絶しようと強い塩素系薬剤に長時間浸けた結果、プラスチック表面が化学変化を起こしてベタつきや異臭が発生し、管内が劣化して演奏不能に陥る事例が報告されています。