多くのパート就労者を悩ませているのが、いわゆる「106万円の壁」と「130万円の壁」の混同です。これらは適用される法令のレイヤーと、影響が及ぶ範囲が根本的に異なります。
「106万円の壁」とは、前述の5要件(週20時間以上、月額8.8万円以上など)を満たす企業で働く短時間労働者が、自ら勤務先の社会保険に加入する基準です。一方、「130万円の壁」とは、勤務先の企業規模や週労働時間にかかわらず、すべての労働者が配偶者や親などの「社会保険の被扶養者」から完全に外れる基準(年収130万円以上)を指します。
扶養を抜けることで直面する最大の壁が「手取り逆転現象」です。例えば年収103万円で働いていたパートタイマーが、時給アップやシフト増によって年収110万円になった場合、自身で厚生年金と健康保険に加入することになります。その結果、年間約16万円前後の社会保険料が差し引かれ、年間の手取り額は約94万円前後にまで激減します。「働いた時間は増えたのに、持ち帰れるお金が減る」というこの逆転現象こそが、多くのパート就労者が就業調整(働き控え)を選択する最大の要因となっています。