書き下し文の作成において、多くの受験生が失点する最大の要因は「漢字のまま書くか、平仮名に直すか」の判断基準にあります。このルールには明確な文法的一線が存在します。
書き下し文で「ひらがなにする漢字」の分類
原則として、日本語の文法構造に直した際に助詞・助動詞に該当する漢字は、すべて「ひらがな」で表記します。実質的な意味を持つ動詞・名詞・形容詞などは「漢字」のまま残します。
- 助動詞となる漢字(ひらがな化):
・「不・弗」(〜ず / 打ち消し)
・「非」(〜にあらず / 否定)
・「使・令・教・遣」(〜しむ / 使役)
・「見・被・為・所」(〜る・らる / 受身)
・「如・若」(〜ごとし / 比況)
・「可」(〜べし / 可能・当然)
・「欲」(〜ほっす・〜んとほっす / 願望) - 助詞となる漢字(ひらがな化):
・「之」(〜の / 連体修飾格 ※「これ」「ゆく」と読む場合は名詞・動詞なので漢字)
・「与」(〜と / 並立・動作の対象)
・「自・従・由」(〜より / 起点)
書き下し文に現れない「置き字(おきじ)」一覧
置き字とは、中国語の文法上は前置詞や終助詞などの重要な役割を持つものの、日本語に訓読する際には読まず、書き下し文にも書かない漢字のことです。
代表的な置き字には以下のものがあります。
- 「於」「于」「乎」:場所・時間・対象・比較・受身などを表す前置詞(〜において、〜より、〜に)。送り仮名として日本語化されるため、漢字自体は読まずに飛ばします。
- 「矣」「焉」「也」「兮」:文末に置かれて断定・強調・詠嘆・語調を整える終助詞。これも送り仮名に含まれるか、単に語調を整えるだけなので書き下し文には表記しません。
置き字をうっかり漢字として書き下してしまうと、文構造を理解していないとみなされ大幅な減点となります。
再読文字(さいどくもじ)の書き下し方
1つの漢字を2回読む特殊な文字が「再読文字」です。書き下し文にする際、「1回目は副詞として漢字で書き、2回目は文末で助動詞としてひらがなで書く」という絶対ルールがあります。
- 「未」:(訓読)いまだ〜ず →(書き下し)未だ〜ず(まだ〜ない)
- 「将・且」:(訓読)まさに〜んとす →(書き下し)将に〜んとす(今にも〜しようとする)
- 「当・応」:(訓読)まさに〜べし →(書き下し)当に〜べし(当然〜すべきだ / きっと〜だろう)
- 「宜」:(訓読)よろしく〜べし →(書き下し)宜しく〜べし(〜するのがよい)
- 「須」:(訓読)すべからく〜べし →(書き下し)須らく〜べし(〜する必要がある)
- 「猶・由」:(訓読)なほ〜ごとし →(書き下し)猶ほ〜ごとし(ちょうど〜のようだ)