大型犬グレーハウンドの平均寿命は10〜14年とされており、ラブラドール・レトリバーやバーニーズ・マウンテン・ドッグなど他の大型犬種と比較しても健やかで長寿な傾向にあります。しかし、サイトハウンド特有の生理学的・遺伝的疾患には細心の注意を払わなければなりません。
第一に警戒すべきは「骨肉腫(骨のがん)」です。大型サイトハウンドは四肢の長管骨に悪性腫瘍が発生しやすい傾向が国内外の獣医学データで報告されています。「散歩中に急に足をかばうようになった」「軽度のビッコを引いている」といった初期症状を単なる捻挫と見過ごさず、速やかにレントゲン検査を行う危機管理意識が寿命を大きく左右します。
第二に、胸郭が深く狭い体型に起因する「胃拡張・胃捻転症候群(GDV)」です。食後すぐに激しい運動をさせたり、一度に大量の水をがぶ飲みしたりすることで胃がガスで膨らみ、捻転を起こして数時間でショック死に至る緊急疾患です。予防策として、食事の回数を1日2〜3回に小分けにし、食後最低2時間は安静に過ごさせるルーティンが不可欠です。
さらに見落とせないのが「麻酔薬に対する特異体質」です。グレーハウンドは肝臓内のシトクロムP450酵素活性が他の犬種と異なり、一般的なチオペンタールなどのバルビツール酸系麻酔薬の代謝・分解に極めて長い時間を要します。避妊・去勢手術や歯科処置の際には、必ずサイトハウンドの麻酔リスク(プロポフォールや吸入麻酔の適切なプロトコル)に精通した動物病院を選択しなければなりません。