生物の教科書を開くと必ず登場するデオキシリボ核酸(DNA)ですが、物質としての正体は「ヌクレオチド」と呼ばれる最小単位が何百万、何億と鎖状につながった高分子化合物(ポリマー)です。高校の生物基礎で学ぶように、ヌクレオチド1つは「リン酸」「糖」「塩基」という3つのパーツが1:1:1の比率で結合してできています。
DNAの骨格を担う糖は、5つの炭素原子を持つ五炭糖の一種である「デオキシリボース(deoxyribose)」です。名称に付く「デオキシ(deoxy)」とは「酸素(oxy)が1つ欠失した(de)」という意味を持ち、リボースの2位の炭素にあるヒドロキシ基(-OH)が水素原子(-H)に置き換わっています。このわずかな酸素原子1個の差が、後述するRNAとの化学的安定性の差に直結しています。
そして、情報を担う実質的な文字の役割を果たすのが塩基です。DNAに含まれる塩基は以下の4種類に厳密に限られています。
- アデニン(Adenine:A):プリン塩基
- チミン(Thymine:T):ピリミジン塩基
- グアニン(Guanine:G):プリン塩基
- シトシン(Cytosine:C):ピリミジン塩基
リン酸とデオキシリボースが交互に強固な共有結合(ホスホジエステル結合)で連なり、内側へ向かって4種類の塩基が突き出すことで、DNAの1本鎖が形成されます。この化学構造こそが、生物が外界の過酷な環境変化にさらされても壊れにくい情報媒体を維持できる物理的な基盤となっています。