ドイツ戦の歴史的勝利から一転、日本中を失望と怒りで包み込んだのが第2戦のコスタリカ戦(0-1)であった。当時、ネット上やSNSでは「なぜ好調なメンバーを固定しなかったのか」「初戦勝利に浮かれて油断した」「消極的すぎる安全運転のミス」といった森保監督への激しいバッシングが吹き荒れた。しかし、当時のチーム内部データと関係者の証言を突き合わせると、単純な「油断」で片付けられない構造的必然性が浮かび上がってくる。
第一の誤解は、先発5人を入れ替えたターンオーバーの意図である。当時のドーハは日中30度近い気候であり、中3日の過密日程において、ドイツ戦で全身の筋肉を限界まで酷使した主力を連続フル稼働させることは医学的・フィジカル的に極めてリスクが高かった。実際、酒井宏樹と冨安健洋はドイツ戦で筋肉系の違和感を抱えており、大会全体を見据えたマネジメントとして選手交代は不可避の決断であった。
真の敗因はターンオーバーそのものではなく、「5バックで自陣深くにブロックを組む相手に対するポジショナルな崩しの欠如」にあった。当時の日本代表は、相手が前がかりに攻めてきたところを奪って速攻を仕掛ける「リアクション型のトランジション」においては世界トップクラスの破壊力を誇っていたが、ボールを持たされた状態で自らスペースを創出する定位置攻撃の戦術的練度が不足していた。
後半36分、唯一のミスとなった吉田麻也のクリアミスと伊藤洋輝のバックパスの選択から相手にワンチャンスを許し、痛恨の失点を喫した。だが、このコスタリカ戦での手痛い敗戦によって過度な慢心が完全に排除され、チーム全員が「泥臭く守り、割り切ってカウンターに賭ける」というリアリズムへ極限まで研ぎ澄まされたことが、続くスペイン戦の奇跡を呼び込んだという逆説的な側面は見落としてはならない。