日本中の誰もが「江口洋介=長髪」という図式を疑わなかった最中、突如としてその髪型に終止符が打たれます。ネット上でも長年「江口洋介 ロン毛 いつまで維持されていたのか」「江口洋介 ロン毛 切った理由は何だったのか」という疑問が絶えません。
長髪の終焉となった明確な境界線は1999年1月期でした。その決定的契機となった作品が、フジテレビ系の医療ドラマ金字塔『救命病棟24時』(第1シリーズ)です。
江口洋介が演じた天才外科医・進藤一生は、過酷を極める救命救急センターで24時間生死と向き合う孤高のリアリストでした。当時の制作秘話や関係者の証言によると、江口自身が役作りに深く没入する中で「命の現場に立つ救急医が、前髪をかき上げながら手術室に立つのはリアリティに欠ける」と痛感。過剰な演出や自身の看板を捨て、医療現場の極限状態を忠実に再現するために、長年愛着を持っていた髪を短く刈り込む決断を下したとされています。
加えて、そこには30代を迎えた役者としての高度な戦略と危機意識がありました。20代を通じて確立された「トレンディドラマの熱血漢・プレイボーイ」という強烈な記号性は、俳優としての寿命を縮めかねない諸刃の剣でもありました。大ヒット作の象徴であり続けたロン毛を自らの手で捨てることで、パブリックイメージを粉砕し、「ビジュアル先行のスター」から「骨太な演技派・主役級俳優」へと脱皮を図ったのです。
結果として、『救命病棟24時』で見せた短髪姿は視聴者に鮮烈な驚きと大絶賛をもって受け入れられ、ドラマシリーズは第5シリーズまで続く大ヒットを記録。この決断こそが、彼が平成から令和に至るまで第一線で主演を張り続けられる最大のターニングポイントとなりました。