なぜ強膜炎はこれほどまでに激しい破壊力を持つのでしょうか。その根底には、強膜が豊富な膠原線維(コラーゲン)によって構成されているという生体構造上の理由があります。
強膜炎の背後には、膠原病や自己免疫疾患が密接に関わっています。全身の結合組織や血管に対して免疫系が誤作動を起こす疾患群において、強膜は格好の標的組織となってしまうのです。代表的な基礎疾患には以下のものが挙げられます。
- 関節リウマチ(RA):強膜炎を合併する自己免疫疾患の中で最も頻度が高く、関節症状よりも先に強膜の炎症が先行する例も珍しくありません。
- 多発血管炎性肉芽腫症(GPA):微小血管に壊死性血管炎を起こす難病で、強膜炎が急速に悪化して組織壊死を引き起こすリスクが高まります。
- 全身性エリテマトーデス(SLE)や再発性多発軟骨炎:自己抗体が免疫複合体を形成し、強膜内の微細血管に沈着して激しい組織破壊を誘発します。
一方で、総合的な血液検査や画像検査を行っても基礎疾患が特定できない原因不明(特発性)の強膜炎も約50%存在します。しかし、臨床追跡調査によると、特発性と診断された患者のうち数年から10年近く経過した後に本格的な関節リウマチや血管炎を発症する例が一定割合報告されています。「原因不明だから軽症」というわけでは決してなく、免疫系の未病段階が眼球に局所的に表出していると捉えるのが、2026年現在の先端医療における共通認識です。