青海チベット高原の生態系は、驚くほど繊細なバランスの上に成り立っている。その基盤を支えるのがクチジロナキウサギだ。
ところが近年の急速な気温上昇と降水量パターンの崩壊により、永久凍土層の融解が進み、高原の植生が劣化。ナキウサギの個体数が局所的に激減する現象が確認され始めた。主食の減少は直ちに捕食者の生存率を直撃する。
「ナキウサギが消えれば、高原の生態系全体が瓦解する」と現地の生態学者は警告する。代わりの獲物を探そうにも、樹木が存在しない見渡す限りの草原で得られる資源は限られている。胃袋を満たせない若年個体の死滅率上昇が、調査データからも如実に読み取れる。