プロ野球のスコアラーは、チームと常に行動を共にする「帯同スコアラー」と、次の対戦相手の試合地へ先回りする「先乗りスコアラー」の2系統に分かれます。なかでも先乗りスコアラーの給料と労働実態は、プロ野球界屈指の過酷さを極めます。
先乗り担当のミッションは、チームが次に戦う対戦カードの3連戦をスタンドから視察し、相手打線の好不調、投手の配球パターン、走塁の癖、バッテリーの配球サインの傾向を克明に記録・分析することです。試合中はバックネット裏の限られたスペースで1球ごとに目を光らせ、球速・球種・コース・打球角度を端末へ入力し続けます。
試合終了後はホテルへ直行し、そこからが本当の業務の始まりです。複数アングルの試合映像をコマ送りで確認し、投手の投球フォームのわずかな癖(グラブの握り、セットポジションでの静止時間、首の傾き)を洗い出します。翌朝までに数十ページに及ぶ分析レポート「対戦カルテ」を作成し、チーム首脳陣へ送付する頃には深夜2時、3時を回る生活が日常茶飯事です。
翌日には数時間の仮眠をとった後、新幹線や航空機に飛び乗って次の球場へ向かいます。プロ野球スコアラー出張手当として、1日あたり約3,000円〜5,000円前後の日当や宿泊費の実費が支給されるものの、シーズン中の6ヶ月間は自宅へ戻れる日が月に数日程度という過酷な生活を強いられます。「家族と過ごす時間がほとんど取れず、精神的にも肉体的にも削られる」という引退者の回想録が示す通り、決して割のいい仕事とは言えない重労働が横たわっています。