事業の資金繰り改善に寄与する東食国保ですが、メリットとデメリットの双方を精査しなければ、将来的な労使トラブルや予期せぬ出費を招くことになります。
最大のメリットは、前述した高所得層における圧倒的な保険料圧縮効果です。売上が伸長し、役員報酬を引き上げた局面でも健康保険料が跳ね上がらないため、事業投資や手元資金の確保に直結します。さらに、予防医療に力を入れており、健康診断や人間ドックの受診補助が充実している点も、激務が続く食品業界の現場からは高く評価されています。
反面、看過できないデメリットが2点存在します。第1は「扶養家族」の概念が存在しない点です。国民健康保険法に基づく組合である以上、加入者全員が個別被保険者として扱われるため、収入のない配偶者や未就学児であっても1人あたり月額数千円〜1万円前後の保険料が加算されます。多子世帯の従業員を多く雇用する事業所では、社会保険料の自己負担割合をめぐって不満が生じる要因になりかねません。
第2は、傷病手当金や出産手当金の保障設計です。協会けんぽでは健康保険法に基づき、業務外の病気やケガによる休業に対して「給与の3分の2」が最長1年6カ月にわたり給付されます。しかし、職域国保におけるこれらの手当は任意給付扱いであり、支給額が日額固定(例:1日数千円程度)であったり、支給対象期間が限定されていたりすることが一般的です。万が一の長期療養リスクに対するセーフティネットの厚みには、明確な開きがあります。