ネット上の言説やファンの間で、時に見受けられる誤解についても検証しておく必要があります。
誤解1:「流行に乗っただけの単なる星座ソング」という見方
当時の歌謡界では星や宇宙をテーマにした企画モノが散見されましたが、『乙女座 宮』は単発のヒット狙いではありませんでした。本作は、全曲を阿木燿子・宇崎竜童が書き下ろしたコンセプトアルバム『COSMOS(宇宙軽騎兵)』の核として構想されたプロジェクトでした。アルバムバージョンでは、シングルとは異なる壮大なイントロとボーカルトラックが採用されており、アルバム全体を通じて「地球から宇宙へ旅立つ魂のオデッセイ」が描かれています。
誤解2:「ツッパリ路線の息抜きで作られた軽い曲」という評価
『横須賀ストーリー』から『プレイバックPart2』へと至る百恵のバイオグラフィにおいて、本作を「箸休め的なポップス」と捉えるのは早計です。実際には、情念路線で固定化されかけた山口百恵という表現者のパブリックイメージを阿木・宇崎コンビが意識的に解体し、表現のレンジの広さを証明するための極めて戦略的な一手でした。この多面的な魅力の提示があったからこそ、その後の『プレイバックPart2』の衝撃が倍増したのです。