ネット上では一時期、10代後半の柳楽優弥に対して「天狗になって挫折した」「トラブルで干された」といった心ない憶測が飛び交った時期がありました。しかし、当時の一次情報や後の自著・インタビューを精査すると、その真相は全く異なるものでした。
受賞後、彼は「カンヌ俳優」というあまりに巨大な看板を背負わされ、オーディションを受けることなく主演のオファーが舞い込む状況に置かれました。しかし彼自身は「自分は何も芝居の技術を知らないのに、なぜ持ち上げられるのか」という自己乖離と強烈なインポスター症候群(過小評価による苦悩)に苛まれていたのです。
周囲からの過剰な期待と自己評価のギャップに悩み、10代後半には体重が最大で80kg超まで激増。心身のバランスを崩した彼は、自ら芸能界と距離を置く決断を下しました。その休業期間中、彼は知人の紹介でガソリンスタンドの洗車スタッフや飲食店でのアルバイトに就き、1日何十台もの車を手作業で磨き上げました。
「お客様から『ありがとう』と言われたとき、自分は特別でも何でもない普通の人間だと実感でき、心が救われた」と本人が語る通り、この市井の経験こそが、彼を肥大化した虚像から解放し、真の役者として再出発させる原動力となったのです。