「川は流れる」の冒頭に登場する「病葉(わくらば)を 今日も浮かべて 街の谷 川は流れる」というフレーズは、昭和歌謡史における白眉として今なお高く評価されています。「病葉」とは、病気や虫食いによって夏に赤や黄色に変色して枯れ落ちた葉を指す季語です。
歌詞の各連で描かれる情景と心理描写を紐解くと、単なる男女の別れにとどまらない、個人の実存的な苦悩と都市社会の無常観が緻密に織り込まれていることがわかります。
- 第1連:「病葉を浮かべる川」と「街の谷(ビル群の谷間)」の対比。都市の発展に取り残された個人の孤独と、過去の恋への未練を象徴。
- 第2連:「つめたいビルの窓」「誰も知らない胸の痛手」。都会の冷淡さと、他者との断絶の中でひとり痛みに耐える心情の吐露。
- 第3連:「あてもなく遠くへ消えゆく水」。どんなに嘆き悲しんでも過去には戻れず、時間はただ無情に流れていくという人生の真理。
高度成長期の真っ只中、誰もが前を向いて走ることを強いられていた時代において、立ち止まり、傷つき、涙を流す名もなき個人の心に寄り添う鎮魂歌(レクイエム)としての役割を果たした点が、この歌詞が持つ普遍性の根源です。