バスを降りる際の意思表示システムも、劇的な技術革新を遂げた分野です。初期の昭和のバスでは、天井や窓枠に沿って張り巡らされた「革紐(ベルコード)」を引っ張る方式が採用されていました。紐を引くと運転席近くに設置された真鍮製のベルが物理的に叩かれ、「チーン」と澄んだ金属音が響いて運転手に停車を知らせていたのです。
しかし、混雑時に乗客が誤って触れてしまったり、力の弱い子どもやお年寄りが引きにくかったりといった課題がありました。そこで昭和40年代以降に普及したのが、現在もおなじみの電気式押しボタンです。押すとランプが点灯して「次とまります」のアナウンスが流れる仕組みは、ワンマン運行における運転手の負担軽減と乗客の利便性向上を両立させました。
また、車体構造自体も乗降性を重視した進化を辿りました。昔のバスは頑丈なフレームの上に車体を載せた高床構造(ツーステップ)が一般的で、乗降口には急な階段が2段ありました。これが平成期以降の超低床化技術の発展により、ワンステップ、そして現在のノンステップバスへと置き換わり、誰もが利用しやすいバリアフリー環境が完成したのです。